「外側」になどいないでしょう。あなたも私も。

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 id:kinyobiさんからお返事いただきました。ありがとうございます。

 『人体の不思議展』の不思議:「m_debuggerさんへのお返事」
 http://d.hatena.ne.jp/kinyobi/20090524/1243172251

 まず、念のため書いておきますが、私はkinyobiさんがブログを書くにあたって『週刊金曜日』の「上司の指示を受けたり、チェックを受けたり」しているとはまったく考えていませんし、そう考えたりしたこともありません。私がkinyobiさんを『金曜日』編集部と同一視して、批判をぶつけているとお考えになった方もいる(多い?)と思いますが、それは誤解です。ただ、そうした誤解を招いたことについては、私の書き方にも原因があったかもしれません。その点については、kinyobiさんにここでお詫びします。

 で、どうして「本当かどうかは外にいる我々には容易にはわからん」というkinyobiさんの発言にここまで私が反発しているのか、ということですが。

 簡単に言うと、理由は二つあります。一つは、kinyobiさんが5月1日のエントリー*1で、「週刊金曜日の記事を理由にした添乗員の不当解雇事件にご支援を!」という『金曜日』の「おしらせブログ」の宣伝をしていること。もう一つは、『金曜日』で連載中の「人体の不思議展」シリーズを紹介していること、です。

 上記の宣伝と紹介は、それ自体は実に結構なことで、私も応援したいと思っています。ですが、kinyobiさんのブログを読んでいて、同時に思わざるをえないのは、こうした取り組みの誠実さをパフォーマティブに裏切っているのが、「本当かどうかは外にいる我々には容易にはわからん」という一言であり、そのダブルスタンダードは批判に値するということです。

 つまり、こういうことです。

 (1)阪急トラベルサポートによる社員への弾圧と、岩波書店による金さんへの弾圧は、いずれも内部告発で、具体的な証言をしているのは被害者だけです。二つの社内弾圧をめぐる大きな違いは、前者はメディア(『金曜日』)が被害者サイドに立って報道し、後者はメディア(『週刊新潮』)が加害者サイドに立って(虚偽を含む)報道をしたという点です。『金曜日』についていえば、前者は取材をしたけれど、後者は取材をしていない、という点が最大の違い(の一つ)です。

 ですから、金さんの証言が「本当かどうかは外にいる我々には容易にはわからん」というのであれば、単に取材をすればよいのではないでしょうか。金さんも岩波書店もメールアドレスを公開しているので、両者に問い合わせをすることくらい、その気になればできないことでもないでしょう。これは『金曜日』の編集に関与できるかできないかに関わらず、個人として可能な行為だと思います。

 kinyobiさんは、「週刊金曜日の記事を理由にした添乗員の不当解雇事件にご支援を!」という呼びかけを宣伝する一方で、岩波書店による金さんへの弾圧については、「金さんの事例で証言者は金さんだけです」と突き放していますよね。では、かりに阪急トラベルサポートの弾圧事件の証言者が一人だけだったなら、あなたは「阪急トラベルサポートの事例で証言者はこの人だけです」とブログに書いたりしましたか?おそらくそうではないでしょう?

 岩波書店による金さんへの弾圧について本当に知ろうとする気があるのなら、証言者が一人だとしても(だからこそ)、切断処理するべきではないと思います。まして、取材をする前から「証言者は金さんだけ」と断定することもできないのではないでしょうか。

 (2)そもそも、「人体の不思議展」は、「献体」についての証言者がまさに不在であるところから、取材が始まったのではないですか?「人体の不思議展」の紹介を地道に続けていらっしゃるkinyobiさんが、岩波書店による金さんへの弾圧については、どうしてこれほど距離を置けるのか?私には正直わかりません。

南京大虐殺がいわば公然と行われた犯罪で証拠も多いのに対し、企業内いじめというのは隠されながら行われ、証拠も少ないんですから。

 「人体の不思議展」の取材がそうであるように、「証拠」というのは、それを必死に伝えたり、掘り起こしたり、記憶したりしようとする当事者や関係者、ジャーナリストらの努力なしには語れないものではないでしょうか。それは、南京大虐殺についても基本的には同じであると思います。

金さんは『金曜日』の内部事情などに関してかなり想像力豊かな推測を何度もされているので、社内弾圧についてもそうした推測で発言していないか?という疑念を捨て去ることが出来ないんですよね。私は。

 『金曜日』の内部事情に関する金さんの推測が外れているというなら、それは具体的に指摘をすればよいのではないでしょうか?その方がお互いのためになるかと思いますが。(指摘済みでしたら申し訳ありません。)

片山さんが“人間として「大事」なのは、「建前」よりも実際の行動ではないのか!。”とおっしゃっている部分が誤解ではないかなーと。
私とtoledさんの会話で「建前」が指していることは、岩波は社員の「思想・良心の自由」「言論・表現の自由」を守れ!!ってことだったからです。分かり難い文章だったよなーと反省しています。

 上記の箇所について、私は「建前を愚直に守ることが大事になっている」という意味だと理解しましたが、片山さんは別の解釈をしている、という点については同意します。けれども、片山さんがおっしゃっているのは、それだけではないと思います。

 『金曜日』編集部が、岩波書店による金さんへの弾圧を報道することは、まずありえないでしょう。なぜなら(と書くのもバカバカしいですが)、岩波書店が金さんを弾圧しているのも、『金曜日』が弾圧を報道しないことも、同じ理由(<佐藤優現象>)によるからです。そして、<佐藤優現象>の主翼を担っているのが『金曜日』である以上、不本意かもしれませんが、kinyobiさんは「外にいる」わけではありません。もちろん私自身もです。

 だって、<佐藤優現象>を支える、日本社会に蔓延するレイシズムの外側になど、いないでしょう?あなたも私も。というか、私たちこそが、その中心にいるのではないですか?ただ、その円がマジョリティには不可視だというだけで。

 片山さんが「まるで他人事のような!ものいい」と言っているのは、こういうことだと私は思います。もっとも、私は片山さんを代弁できるわけではないので、別の含意があるかもしれませんが。

他の会社の事についてとやかく言える立場じゃないので回答は差し控えさせていただきます。

 「人体の不思議展」シリーズでは、「日本アナトミー研究所」が情報公開や質問への回答を拒否していることをもって、疑惑を裏づける「証拠」にしていたはずですが・・・。くどいようですが、こういうのって、ダブルスタンダードじゃないですか?

*1:トラックバックがうるさくなってしまうと思うので、リンクは貼りません。