週刊金曜日への投書(ボツ)を公開します

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 以前お知らせした週刊金曜日への投書がボツになったので、ここで公開します。どうして、こんなに早くボツになったことがわかるかというと、北村編集長から直々に不採用のメールが届いたからです。

 週刊金曜日は大昔に*1定期購読をしていたことがあって、そのときには天皇制に関して投書をしたのですが、それは何の通知もなくボツになりました。『金曜日』のサイトにも「掲載の可否についてのお問い合わせはご遠慮ください。掲載させていただく際には、事前に内容確認のご連絡をいたします」と書いてあるので、通常はわざわざ編集長が不採用の連絡をすることはない、と思われます。

 で、この編集長からのメールがまた突っ込みどころ満載なんですが、その前にまず投書(「論争」、16字×72行)の内容を公開しておきます。

拝啓 『金曜日』関係者各位

 朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」)のロケット発射をめぐる一連の北朝鮮バッシングに対して、『金曜日』がどのように対応するのか興味を持ち、数年ぶりに本誌(四月三日号から四月一七日号まで)を購入した。率直に言って、言論の自由をあからさまに否定する佐藤優氏(『インテリジェンス 武器なき戦争』)や、解釈改憲論のイデオローグである山口二郎氏(「平和基本法」)らを連載陣に据える本誌において、誠実な回答が期待できるとも思えないのだが、以下質問したい。

 (一)四月三日号で北朝鮮バッシング問題(北朝鮮問題ではない)を黙殺したのはなぜか?同号で北朝鮮について触れた記事は、辻元清美氏の「永田町航海記」(連載)を除けば投書(豊森淳氏)のみで、後者は被害者意識にもとづく先進国のナショナリズムを温存した「平和」(構造的暴力)を志向する立場でしかない。戦後も拡大・再生産する日本国家/日本人の加害性と向き合おうとする意志が、本誌にはまるで見られない。

 (二)四月一〇日号の特集「北朝鮮人工衛星”打ち上げ 戦争ごっこに巻き込まれるな」で、北朝鮮への経済制裁の延長・強化、在日朝鮮人への人権侵害、北朝鮮を仮想敵国とする改憲への流れのいずれにも言及していないのはなぜか?「戦争ごっこで利益を得るのは軍需産業と麻生政権だけなので国民は騙されるな」という本誌の主張は、北朝鮮バッシングを支えるメディア(本誌を含む)と国民(本誌の読者を含む)に蔓延する北朝鮮在日朝鮮人への差別意識を、陰謀論と愚民観によって見過ごそうとする、二重・三重にも差別的な欺瞞ではないのか。

 (三)四月一七日号の編集部(山口舞子氏)の記事で、北朝鮮の打ち上げ物体を何の留保もなくミサイルと断定する「識者」の見解を垂れ流しているのはなぜか?すなわち、本誌が「ミサイル関連飛翔体」という政府見解をも超える侮蔑的な対北朝鮮報道をしているのはなぜか?

 上記質問に対する私自身の答えはこうだ。本誌編集部はすでに佐藤優氏に代表される排外主義を身体化しており、それを肯定(黙認ないし擁護)する言説しか生み出せなくなっているのである。イスラエルのリベラルが結局はシオニストでしかないように、「愛国」主義に傾斜する(四月一七日号の「論争」に象徴される)本誌は、もはや左派に値しない。

 本誌の編集部に問いたい。左派が在日外国人(特に朝鮮人)の人権を否定する排外主義や改憲にくみするなら、その存在意義は何なのか?本誌に良心的な記事を寄稿する連載陣に問いたい。あなたの記事は、それが良心的であればあるほど、本誌が上記の路線を強めるためのアリバイ作りにも利用されるが、それでも連載を続けることに迷いはないのか?本誌の読者に問いたい。あなたは本誌に一体何を期待しているのか?

 ・・・そういうわけで、投書が採用されないことは、最初からわかりきっていました。むしろ北村編集長が直接反応してきたことが、どちらかと言えば意外でした。内容は『金曜日』編集長としての公的な見解でしょうから、公開しても問題はないでしょう。5月1日に送られてきたメールです。

」ナ」ユ」テ、ヌ、ホハクサ糕ス、アホ网ヌ、キ、ソ。」

 あー、間違えました。こっちです。

 朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)のロケット発射問題についてご質問をいただきました。

 四項目にわたっていますが、個別の回答は控えさせていただきます。

 ご承知の通り、週刊誌の場合、その週に展開できる記事は分量が限られます。従って、本誌が北朝鮮問題についてどのように報じてきたか、あるいは在日外国人の人権に関していかなる記事を書いてきたかは、ぜひ長期間にわたって検証していただきたいと思います。

 また佐藤優氏や山口二郎氏への批判もありましたが、この両氏に限らず、執筆者と本誌の考え方は必ずしも一致しません。さまざまな見解が載ってこその「雑誌」と考えております。

 というわけで。まずは、id:F1977さんに報告します。『金曜日』は左派として在日朝鮮人の権利をどのように考えているのか教えてくれませんでした。理由としては、

  1. 『金曜日』はもはや左派ではない。
  2. 『金曜日』は、在日朝鮮人の人権について、たいして何も考えていないか、どうでもよいと考えている。

という2つがすぐに思い浮かびます。たぶん両方でしょう。で、これからどうしてくれようか?と考えましたが、とりあえず返事をすることにしました。先ほど北村編集長に送ったメールです*2。反応があればまたブログでお知らせします。

 お返事どうもありがとうございました・・・と申し上げられたらよいのですが、このような非論理的かつ不誠実な説明を私が受け入れたと思われるとしたら非常に迷惑ですので、以下指摘させていただきます。

朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)のロケット発射問題についてご質問をいただきました。

 故意に論点をずらされているようですが、私が問題にしているのは、北朝鮮の「ロケット発射問題」ではなく、北朝鮮のロケット発射をめぐる一連の北朝鮮バッシングについてです。投書にも(『週刊金曜日』が)「北朝鮮バッシング問題(北朝鮮問題ではない)を黙殺したのはなぜか?」とはっきり書いています。

 (1-1)もしも、論点を故意にずらされたのだとすれば、その理由をお聞かせください。

 (1-2)もしも、論点を故意にずらされたのでなければ、私が北朝鮮のロケット発射それ自体を問題にしていると解釈された根拠をお聞かせください。

四項目にわたっていますが、個別の回答は控えさせていただきます。ご承知の通り、週刊誌の場合、その週に展開できる記事は分量が限られます。従って、本誌が北朝鮮問題についてどのように報じてきたか、あるいは在日外国人の人権に関していかなる記事を書いてきたかは、ぜひ長期間にわたって検証していただきたいと思います。

 申し訳ありませんが、正直まったく理解できません。

 (2)こんな説明がまかり通るなら、『週刊新潮』や『週刊プレイボーイ』に在日外国人の人権を尊重する記事が掲載されないのも、「その週に展開できる記事は分量が限られ」るからだということになりますが、そのようにお考えであると解釈してよろしいでしょうか。

 (3)なお、上記は、「本誌が「ミサイル関連飛翔体」という政府見解をも超える侮蔑的な対北朝鮮報道をしているのはなぜか?」という質問に対する答えにはなっていませんので(「ミサイル」も「ロケット」も「人工衛星」も文字数は同じです)、この点に対する説明を求めます。

また佐藤優氏や山口二郎氏への批判もありましたが、この両氏に限らず、執筆者と本誌の考え方は必ずしも一致しません。さまざまな見解が載ってこその「雑誌」と考えております。

 これも論点をずらされているようですが、私は佐藤優氏や山口二郎氏を批判する以上に、そうした人々を連載陣として起用する本誌のあり方を批判しています。

 繰り返しますが、こんな説明がまかり通るなら、本誌に読むべき記事が掲載されたとしても、それは「本誌の考え方は必ずしも一致し」ないことになり、本誌を「長期間にわたって検証」する必要性も認められません。

 (4)この点についてはどうお考えでしょうか。

 以上の四点について、改めて申し入れを行います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まあ、わざわざ返信しておいて何だけど、北村編集長は「天皇を戴いた日本は四民平等である」とか言っちゃう人間だからなー。ぶっちゃけ生理的にムリとても自分とは噛み合わないと思われ。

 それにしても、北村編集長も、こんなF1並のスピードで墓穴を掘るような返事をするくらいなら、無視を決め込んでいた方がどう考えても賢明だったと思うのだけど、もしかして墓穴を掘っている自覚がないのだろうか?だとしたら、相当理解不能だ。きっと『金曜日』には批判的な投書をボツにするための専用テンプレがあって、「佐藤優氏や山口二郎氏への批判もありましたが、この両氏に限らず、執筆者と本誌の考え方は必ずしも一致しません。さまざまな見解が載ってこその「雑誌」と考えております」という文章がデフォルトで入っているのだろう。北村編集長はそろそろ人工知能を移植した方がよいと思う。

*1:といっても7年ほど前のことだが、今から振り返ると、やたらと隔世の感がある。

*2:冒頭の社交辞令は省いています。