朝鮮総連の資産凍結がGJなら日本企業の資産凍結もGJなんだけど

 日本政府は、北朝鮮がミサイルや人工衛星を打ち上げた場合、朝鮮総連などの資産凍結や、さらなる輸出制限措置を取る方針を固めたそうです。今のところ産経新聞でしか報じられていないようだけれど、ネット上ではGJという意見が多いので、補足をしておく。

 もしもあなたが、

  1. 朝鮮総連の資産凍結はGJである
  2. 日本政府は、北朝鮮のミサイル発射をとめるために、できる限りのことをするべきである

と思っているなら、日本企業の資産凍結も当然GJということになるので、今すぐ政府に日本企業の資産を凍結するよう要求してください。

 以上。

追記

 ミサイル発射なら北資産を凍結 日本政府(2009.03.06 産経新聞
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090306/plc0903060120000-n1.htm

 産経の記事にもあるように、「国連加盟国は2006年11月の安保理決議1718号に基づき、北朝鮮の核開発や大量破壊兵器弾道ミサイル計画に関連する資産・口座を凍結できる」という。

 国連安保理決議1718号
 http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/area/n_korea/anpo1718.html 

 読んでみるとわかるのだけど、国連安保理決議1718号は、朝鮮総連の資産凍結を正当化する根拠には必ずしもなっていない。というか、むしろ朝鮮総連の資産凍結に反対する根拠としても読めるのではないかと思う。具体的に引用してみる。

8 (d)すべての加盟国は、それぞれの法的手続に従い、この決議の採択の日に又はその後いつでも、自国の領域内に存在する資金、その他の金融資産及び経済資源であって、北朝鮮の核関連、その他の大量破壊兵器関連及び弾道ミサイル関連計画に関与し又は支援を提供している(その他の不正な手段を通じたものも含む。)として委員会若しくは安全保障理事会により指定される者又は団体により、又は、それらの代理として若しくはそれらの指示により行動する者若しくは団体により直接的又は間接的に所有され又は管理されるものを直ちに凍結し、また、いかなる資金、金融資産又は経済資源も、自国の国民又はその領域内にいる者若しくは団体により、そのような者又は団体の利益のために利用可能となることのないよう確保する。

9 上記8(d)の規定は、関係国により次のとおり決定された金融その他の資産又は資源には適用しないことを決定する。

(a)食糧、賃料又は抵当、医薬品及び医療、租税、保険料及び公共料金のための支払いを含む基礎的な経費として必要であると決定されたもの又は法的役務の提供に関連して生じる妥当な専門手数料及び費用の払戻し若しくは凍結された資金、その他の金融資産及び経済資源の日常の保有若しくは維持のための国内法に基づく手数料若しくはサービス料のためのみに充てられる支払いであると決定されたものであって、関係国より委員会に対し、適当と認められる場合に、そのような資金、その他の金融資産及び経済資源へのアクセスを認める意図が通知され、かつ、委員会がそのような通知がなされてから5作業日以内に否定的な決定を行わない場合

 国連安保理決議1718号をそのまま受け取れば、日本政府が朝鮮総連の資産を凍結できるのは、「北朝鮮の核関連、その他の大量破壊兵器関連及び弾道ミサイル関連計画に関与し又は支援を提供している」部分に限り、民生部門に関わる資産の凍結が正当化されるわけではない(と読める)。

 朝鮮総連の資産のどれだけが北朝鮮大量破壊兵器・ミサイル関連計画に流れているのかということを、確認しようともせずに、朝鮮総連の資産を凍結できるなら(実際にはできるらしいが)、日本政府の国連安保理決議1718号の解釈がおかしいか、国連安保理決議1718号そのものがおかしいのではないだろうか?なぜなら、関係国(この場合は日本)に当該団体(この場合は朝鮮総連)の資金の流れを調査する責任がないなら、これらの規定はすべて必要ないからだ。つまり、関係国が任意の団体に対して恣意的に資産を凍結できることになる(実際にはそういうことらしいけど)。

 翻って日本の側はどうなのだろう?多くの日本企業は、ミサイル「防衛」計画に巨額の資金を流し続けている。これらの資金の流れは、その気になればかなり詳しく追うことができるだろう。たとえば、三菱重工は、海上配備型迎撃ミサイルSM3の開発に大きく貢献したとして、米防衛産業協会から「2007年度特別業績賞」を贈られているし、NECも軍事衛星の打ち上げに向けて大々的なキャンペーンを張っている。日本の軍需産業の市場は年間2兆円規模に達し、米国からの兵器の購入額も世界第5位である*1。こうした日本の軍事力に比べたら、北朝鮮など、ボブ・サップの前のあなたみたいなものだと思えばよい。

 杉原浩司:「「終わりなきミサイル防衛」に終止符を!」
 http://www16.ocn.ne.jp/~pacohama/no08/0801gihunopac3.html

 北朝鮮がミサイル開発をするのは、一言でいえば追い詰められているからで、北朝鮮に核開発を断念させる最も効果的な方法は、北東アジア全体を非核化し(日本が米国の核の傘から抜け出るということでもある)、日本の軍事大国化をとめることだろう*2。ということは、結局のところ、北朝鮮のミサイル発射をとめるためには、日本の軍事大国化を進める日本企業の資産を凍結し、それらを支える日本社会に対して経済制裁を発動すればよいのではないだろうか?

 そういうわけで、朝鮮総連の資産凍結がGJで、日本政府は、北朝鮮のミサイル発射をとめるために、できる限りのことをするべきだと思う人は、ぜひ日本企業の資産凍結にも賛成してください。え?日本企業の資産を凍結したら、あなたが困るって?いや、でもそれが「国益」でGJだって話をしてるんじゃないの?違うの?

*1:ちなみに、1位はオーストラリア、2位はイスラエル、3位はサウジアラビア、4位はイラク

*2:もちろん日本だけが軍縮をすればよいと言っているわけではない。念のため。