ガザの虐殺をとめられるのは誰か(2)

 次はあまりにもまともな毎日新聞の社説。単に朝日の後だから目が眩んでいるだけかもしれないけど、こんなに普通の新聞がもうすぐ潰れてしまうなんて残念だ。*1

国連安保理決議 ガザの早期停戦に期待する (2009.01.10 毎日新聞 社説)

 おびただしい死者が出ているガザ情勢の収拾へ、国連安保理が動き始めた。イスラエルハマスイスラム原理主義組織)に即時停戦を求め、イスラエル軍の完全撤退にも言及した決議案が14カ国の賛成で採択された。米国が最終的に棄権したのは残念だが、とりあえず決議採択を重要な一歩として歓迎したい。

 「ハマスイスラム原理主義組織)」というレッテル貼り以外は素直にうなずける。

 とはいえ、見通しは明るくない。イスラエルオルメルト首相は即時停戦決議の受け入れを拒み、軍事作戦を続ける構えだ。ハマスのロケット弾攻撃も簡単にやみそうにない。国際社会は停戦実現へ、あらゆるチャンネルを使って双方を説得しなければならない。
 パレスチナ人の死者は800人に迫った。ガザでは医療関係者が市民多数の「虐殺」を証言する。国連機関の車をイスラエル軍戦車が砲撃するという事件も起きたという。一連の信じがたい出来事によりイスラエルは国際的信用を失っている。過剰な武器使用をやめるよう重ねて自制を求めたい。
 英国が提出した決議案は、パレスチナ自治区ガザからのイスラエル軍全面撤退につながる「即時、持続的で十分に尊重される停戦」を呼びかけ、ガザで医薬品や食糧などの人道支援物資の完全な配給が実現することを求めた。

 バグ発生率は他社(朝日新聞社)比5%くらいか?「虐殺」はカギ括弧いらないけどね。

 また、市民に対する暴力を非難する一方、加盟国にガザへの武器、弾薬の密輸を防ぐ取り組みを求め、パレスチナ内部の和解への措置にも期待した。ガザを実効支配するハマスアッバスパレスチナ自治政府議長が率いるファタハの歩み寄りを促す文言だろう。

 ハマスは前回の選挙でパレスチナの人々が選び出した組織である。国際法のもとで、ハマスは、不法占領者と侵略者に対抗するために武器を取る権利を有する。(中略)イスラエルは米国から巨大な支援を得ている。テロについて言えば、米国によるテロの定義に完全に合致するのはイスラエルの行為である」

 益岡賢のページ: 「イスラエルの嘘プロパガンダ・マシン全開」
 http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/gaza081231.html

 ハマスファタハが対立を続ける要因のひとつは、イスラエルファタハに対して武器や資金を供与して、パレスチナの内部抗争を煽っていることである。

 P-navi info: 「内部抗争激化と、暴露されたイスラエルによる構想」
 http://0000000000.net/p-navi/info/news/200701302004.htm

 それにしても米国の棄権は気がかりだ。ライス米国務長官は決議への支持を表明している。米国が棄権したのは、停戦への具体的措置をめぐる紛争当事者とエジプトの協議の結果を見定めたかっただけだという。
 しかし、米国は決議案の文言をめぐって英仏と協議を重ね、賛成することが見込まれていた。ライス長官とブッシュ大統領の電話の後で米国が棄権を選択したのは、同盟国イスラエルへの配慮との味方が強い。

 とても朝日と同じ記事とは思えない。まあ同じ記事ではないんだが。

 米議会では、ハマスに対するイスラエルの戦闘を支持する空気が強い。20日に退任するブッシュ大統領は、特にイスラエルへの支援が厚い米大統領といわれただけに、議会の動きもにらんで棄権を決断したのだろう。
 しかし、イスラエルを説得できるのは実質的に米国だけだ。中東の緊張緩和はイスラエルにとっても重要である。退任まで10日ほどある。ブッシュ大統領はエジプトやサウジアラビアなどの親米アラブ諸国や欧州諸国などと協力し、パレスチナの流血を止める努力をしてほしい。
 いまや国際社会の良識と人権感覚が問われている。パレスチナへの有力支援国である日本も、事態沈静化へ一役買うときである。

 全体としてそれほどおかしなことは言っていないはずなのだけど、「イスラエルを説得できるのは実質的に米国だけだ」という主張には、強い違和感を覚える。これが「ガザの虐殺をとめられるのは誰か」というタイトルにつながっているわけですが、すぐにはまとまりそうにないので、読売の社説と一緒に次回に持ち越します。

*1:って、普通でもないし潰れないよって?