ハマスが街に潜んでる?それがどうした?

 イスラエル軍による国連機関への攻撃と避難民の大量殺害を受けて、今日の朝刊では読売・朝日・毎日・産経・東京など各紙が、この問題を大きく取り上げている。毎日は社説で、朝日は一面と国際面で、産経・読売は国際面で、それぞれ突っ込みどころはあるにせよ、ガザの破局的な状況を伝えてくれている。

 ところが、ただ一紙、東京新聞は、「ハマス 街に潜む」というイスラエルプロパガンダ・バグ満載の記事をリリースしていたのであった。あの産経新聞「戦火の中さまよう人々 ガザ市街戦 4000人が難民化 停電、断水…『人道危機』の恐れ」という現地ルポを転載し、あの朝日新聞「ガザ『狂ったような状況』 子の犠牲160人超す 満員の病院、天仰ぐ父親」という現地情報を紹介しているときに、東京新聞が「ハマス 街に潜む」って、いったいどういうセンスだよ・・・。

ハマス 街に潜む (2009.01.07 東京新聞 7面)

 タイトルを読み込んだ瞬間にフリーズしそうな記事を読む前に、BBCの動画を紹介しておきます。

 Strike on Gaza school 'kills 30'
 http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/7814192.stm

 【エルサレム=内田康】イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻は四日目を迎えたが、ガザ中心部で同軍とイスラム原理主義組織ハマス側の歩兵同士が撃ち合う市街戦はまだおきていない。パレスチナ民兵の多くは住宅密集地に隠れ、イスラエル兵を誘い込もうとしている。市街戦に持ち込み、戦闘を泥沼化させるのがハマスの狙いのようだ。

 まずはタイトルの「ハマス 街に潜む」について。えーと、ハマスは街にいますけど、それが何か?だって、ハマスパレスチナの人たちが民主的な選挙で選んだ政権だし、それ以前にひとりひとりの人間なんだから、かれらにも街の中に避難する権利がないとは言わせない*1。これが「創価学会員 街に潜む」だったら、翌日には関係者のクビが飛ぶよ?

 次に「ハマスの狙い」とやらについてだけれど、たとえハマスの狙いが何であっても、イスラエル軍が犯している戦争犯罪―民間人への攻撃―は正当化できない。まして、イスラエル軍によるガザへの全面攻撃が、「ハマスのロケット弾攻撃に対する『報復』という、イスラエルが主張する言い分とは異なり、6ヶ月も前から周到な準備のもとに計画されていた」とすれば、問われるべきはイスラエルの狙いの方だ。

 「ハマスが望む戦いはまだ始まっていない」。ハマス報道官は六日、本紙の電話取材にこう語った。イスラエルのバラク防相も五日の国会審議で「敵はまだ、われわれと向き合うことを望んでいない。都市部にわれわれを誘うつもりだ」と認めた。

 なんだかストーカーじみたバラク防相の台詞。「彼女はまだ、人前で俺様といちゃつくことを望んでいない。俺様をツンデレに誘うつもりだ」みたいな。大丈夫か?

 イスラエル軍の主力舞台はガザ市郊外にとどまる。市街戦でイスラエル兵や民間人の犠牲が増え、国内外の世論が硬化するのは避けたいからだ。攻撃は空と海からの爆撃と戦車の砲撃が中心だ。

 ガーディアン紙によると、7日時点でのイスラエル側の死者は10人、負傷者は62人だが、このうち少なくとも死者4人、負傷者24人については、味方の誤射によるという。一方、パレスチナ側の死者は660人以上、負傷者は2800人以上。犠牲者はすでに増えてます。あと「攻撃は空と海からの爆撃と戦車の砲撃が中心」って、要するに陸海空軍総出動ってことじゃん!

 Guardian: The Israeli attacks on Gaza
 http://www.guardian.co.uk/world/interactive/2009/jan/03/israelandthepalestinians

 ハマスの兵力は一万人以上とされる。イランなどの支援で密輸の武器を蓄えてきた。銃と精度の低いロケット弾が頼りだが歩兵同士の戦闘ならイスラエルに打撃を与えられる。
 米国からテロ組織に指定されているハマスだが、貧困層への福祉活動を通じて庶民には根強い支持がある。軍事侵攻で庶民のイスラエルへの憎悪は高まり、「ハマス兵が死んでも、民間人が新たに兵士になる」(ガザ住民)という声もある。
 ある軍事専門家も「ハマスは根絶やしにされないよう耐えれば、勝ちなのだ」と語る。
 イスラエルは自国の安全確保のため、ハマス掃討を狙うが大規模市街戦まで踏み込むのか。バラク防相は「この先、難しい局面が来る」と語った。

 なんなんだよ、この「苦渋の選択を迫られるイスラエル」みたいな腐った終わり方は。まるで、経団連の御手洗会長の新年挨拶*2のようである。「難しい局面」?そんなもの、電気や燃料はおろか水も食糧も、そして逃げ場さえない状態で、イスラエル軍の占領・攻撃によって、緩慢に―あるいは突然―殺されてしまうガザの人々から見れば、天国のようなものじゃないのか。

 東京新聞の購読者は、国際部の内田康さんをイスラエルプロパガンダから救う会を急遽立ち上げた方がいいよ。いやマジで。

*1:問題はどこに避難してもイスラエル軍に殺されかねないことだ

*2:「聳え立つ巨大な岩壁に挑む年を迎えた」とかなんとか